建造費115億円、740人乗り、最高時速70キロ。未来型ハイテク旅客造船「テクノライナー」。東京都心と小笠原諸島(東京都小笠原村)を約17時間で結ぶ全長約140メートルの巨大な海の新幹線が、なんと一度も客を乗せることもなく・・・。その歳月1年以上。平成17年11月に就航予定だったが・・・。
就航直前になって、燃料費の高騰などから年20億円以上の赤字が見込まれることがわかり、
国土交通省と東京都は互いの負担額が折り合わないとして就航を断念した
ただの鉄のかたまりと化す可能性も!?
***トリビアプラス***(海事特報.6月25日付、日経BP6月号参考)
原因は、客より重い燃料!?
東京大学大学院工学科の宮田秀明教授が、次世代型高速船テクノスパーライナー(TSL)の就航断念について、「客より燃料が重い船」と指摘した。
宮田教授は「(就航とん挫の)根本的原因は空気圧で浮上する仕組みを使った高速船のシステムにあるとし、さらにペイロード(乗客などから料金を取れる積載重量)よりも、燃料が重いシステムを採用したことによるとしている。
確かに、テクノスパーライナーは父島二見港に専用の給油施設を造らないため、
東京出航のさいに東京~父島往復分の燃料を積載することになっていて、
航続距離はその関係で2、200キロとなっていた。
小笠原航路では積み込む燃料があまりに膨大であるため
燃料を運搬するために燃料を消費する形となり、
採算をとることは全く覚束なかったといえる。
また、宮田教授は、現在の輸送機器で
燃料が重くても採算が取れるのは時速800キロの高速で移動する航空機だけと指摘。
さらに、TSLは航空機の十分の一以下のスピードで、
ペイしないのは当然で、
これに昨今の燃料費高騰がダメ押しになったとしている
。同教授は「いまも造船所に繋留されたままで、投資額(115億円)こそ二ケタ少ないとはいえ、東京湾アクアラインや本州四国連絡橋に匹敵する失敗作だった」と付記している